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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)5492号 判決 1998年9月22日

大阪市北区本庄西三丁目九番三号

原告

株式会社ニッショー

右代表者代表取締役

佐野實

右訴訟代理人弁護士

小松陽一郎

池下利男

村田秀人

小野昌延

右補佐人弁理士

朝日奈宗太

佐木啓二

大阪市中央区道修町一丁目七番一〇号

被告

扶桑薬品工業株式会社

右代表者代表取締役

戸田幹雄

右訴訟代理人弁護士

牛田利治

岩谷敏昭

澤由美

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告は、別紙物件目録記載の輸液容器を製造・販売してはならない。

二  被告は、前項記載の輸液容器及びその半製品を廃棄せよ。

第二  事案の概要

一  基礎となる事実(いずれも争いがない。)

1  原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録にかかる意匠を「本件登録意匠」という。)を有している。

登録番号 第九二九五五二号

出願日 平成五年一二月一六日(意願平五-三八四四七号)

登録日 平成七年四月二五日

意匠にかかる物品 輸液容器

登録意匠 別添意匠公報のとおり

2  被告は、別紙物件目録記載の写真の輸液容器(以下「被告製品」といい、被告製品の意匠を「イ号意匠」という。)に輸液製剤を収容して、それを製造・販売している。

二  原告の請求

本件は、イ号意匠が本件登録意匠に類似しているから、被告製品の製造・販売は本件意匠権を侵害するとして、原告が、被告に対し、被告製品の製造・販売の差止めと被告製品及びその半製品の廃棄を求めた事案である。

三  争点

本件における争点は、イ号意匠が本件登録意匠に類似するか否かである。

第三  争点に関する当事者の主張

一  原告の主張

1(全般的主張)

本件登録意匠及びイ号意匠の構成態様は、それぞれ、別紙1「本件登録意匠の構成に関する当事者の主張」及び別紙2「イ号意匠の構成に関する当事者の主張」の各「原告の主張」欄のとおりである。これによれば、両意匠は、対象物品、基本的構成態様及び具体的構成態様のいずれにおいても、一致している。

2(本件登録意匠とイ号意匠の類否について)

(一)  本件のような比較的シンプルな形状のものにあっては、まさに意匠全体の印象が問題となるものである。したがって、本件登録意匠の要部は、その基本的構成態様及び具体的構成態様の全体にあり、特に全体としてスマートにイメージさせる点に特徴があり、これが、看者の注意力を最も喚起せしめるところである。

そして、意匠の類否は、両意匠を離隔的に観察した場合、取引者・需要者が混同を生じるか否かによって判断すべきであり、また、その外観形状は看者の注意が最も惹かれる正面の形状により判断すべきであるところ、両意匠を比較した場合、被告主張にもかかわらず、その外観形状は極めて近似し、両者とも全体としてスマートで安定したまとまりのある印象を有する点でまさに一致しており、両者は類似関係にあるといわざるを得ない。

(二)  この点被告は、本件登録意匠とイ号意匠とでは、容器本体の形状が異なると主張するが、容器本体の全体形状は極めて近似している。

(三)  また、イ号意匠においてはカプセルと胴部の上部の口部との連結部がくびれているのに対し、本件登録意匠では連結部にくびれ部分が存在するとともにカプセルの下方から胴部にかけて一部切欠したカバー部分が存在する点で両者の構成に差異がある。しかし、本件登録意匠でもイ号意匠と共通するくびれ部分を看者が容易に視認できるため、全体的な印象を異にするほどの重要な差異点にはならず、細部的な事項にすぎない。したがって、一方がずんぐりし一方がスマートな印象を受けるという被告主張のような印象の相違は全く生じない。

(四)  さらに、本件登録意匠とイ号意匠とでは、容器本体の底部の口部の形状が異なるが、いずれも円筒状である点では共通しており、また口部としては一般的な形状であるため、全体観察をした場合、この差異は細部的な相違にすぎない。

(五)  このように、これらの差異点は両者の共通点を凌駕するものではなく、看者に与える審美感や意匠的効果は、本件登録意匠とイ号意匠との間では全く同じである。

3 公知意匠との関係について

被告は、種々の公知意匠を提出して、本件登録意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様はありふれた形態であるという。しかし

(一)  本件訴訟において公知意匠として提出された証拠中、本件登録意匠の出願後の資料(乙8ないし10、乙30ないし34。書証には枝番を含む。以下同じ。)は、本件登録意匠の効力範囲を確定する資料とはなり得ない。

(二)  バイアル付きのもの(乙4、乙5、乙7、乙8、乙10ないし29)は、カプセルの上にバイアルが一体として乗っていて、カプセルより上の形状が極めて縦長で段が付いており、全体としてのまとまりのある意匠の印象が全く異なるので本件では参酌されない。

(三)  鉉状吊り手段は本件登録意匠における重要な特徴であると解すべきところ、乙5、乙6、乙12、乙13、乙25、乙28の各意匠にはそもそも吊り手段がなく、また、吊り手段を備える意匠にあっても、小さな又は非常に小さな半円形であったり(乙11、乙14ないし20、乙26、乙27)、独立した突出環状であったり(乙4、乙22ないし24、乙29)、極小形態であったり(乙21)であって、本件登録意匠の吊り手段とは形態が全く異なる。

(四)  その他、乙6では、カプセルが胴長であり、針先が突出しているという形状の相違がある。

(五)  このように、全体形状を比較した場合、公知意匠は明らかに本件登録意匠と形状が相違しており、印象が異なる。これらの公知意匠と本件登録意匠との距離に比較すれば、本件登録意匠とイ号意匠との距離ははるかに近く、両者が類似していることは明らかである。

4 本件登録意匠とイ号意匠における透明性について

(一)  被告は、本件登録意匠が不透明であるのに対し、イ号意匠は透明であるから、両意匠は類似しないと主張する。

(二)  確かに本件登録意匠については、被告が指摘するように、願書に透明である旨の記載はしていない。しかし、そのことの故に、本件登録意匠の効力が不透明なものに限定されることにはならない。意匠法施行規則様式8備考19には「物品の全部又は一部が透明である意匠の図面」の作成の仕方が記載されているが、意匠審査基準三-一二一八では、物品が透明であっても「電球のように、すけて見える部分をそのまま表さなくては、その意匠を十分に表現できないものは、備考19イの要領で表す」が「その他のものは不透明体のように表し」としており、不透明体のように表す透明体の表現方法も認めている。特に、透明をめぐる概念としては、「透明」、「半透明」、「不透明」の三種が存在するが、意匠法施行規則では、「半透明」の場合にどのように描くべきなのかの規定がない。したがって、少なくとも、「透明」と明示していない意匠権の効力が「半透明」に及ばないということはあり得ない。

また、物品が透明であるか否かはその審美的価値に対し特に重要な影響を及ぼさないのが通例であると考えられるから、該物品の全部又は一部が透明である旨を特に限定して意匠登録を受けようとする場合は格別、そうでない限り願書にはそれが透明である旨の記載を要しないものと解すべく、したがって、願書に透明、不透明に関する何らの記載もないときは、該意匠に係る物品は透明体であると不透明体であると何らの限定を受けないものと解すべきである。

さらに、本件登録意匠に係る物品は「輸液容器」である。輸液容器の容器本体には、輸液が入っており、内部の輸液の残量が常に認識できる必要があるため、それ自身が透明体又は半透明体であることは常識である。また、カプセルにはその内部に刺通針が存在し、バイアル(薬剤容器)を(両頭針の場合には容器本体をも)刺通することが不可欠である(本件登録意匠公報にも、その構造を示す断面図が記載されている)。したがって、輸液容器にバイアルをセットして使用する場合には、バイアルへの刺通の様子、さらには容器本体への刺通の様子を外部から確認できなければならないので、やはりカプセルも透明体又は半透明体であることが、取引者・需要者において当然の前提となっている。原告が、意匠の説明で、透明・不透明の記載をしていないのは、透明・半透明を前提としているのであり、その上で、全体の外観形状を主たる目的として出願し、登録されたものなのである。右のような意匠に係る物品の性質からも、本件登録意匠の効力は少なくとも半透明体に及ぶ。

したがって、本件登録意匠は透明体・不透明体のものにその効力が及ぶものである。

(三)  他方、被告製品のカプセルが完全な透明体でないことは明白であり、あえていえば半透明体である。このような場合には、完全に透明なガラス製の電球などとは異なり、半透明体の内部形状は直ちに明確に認識することが困難であるため、むしろ外観形状が、まとまりのある意匠全体として強く認識される。しかも、カプセルは全体としての輸液容器の意匠の一部分にすぎないのであるから、本件のような比較的シンプルな意匠においては、その部分の印象の違いがあるとしても、それは極めて微弱なものにすぎない。なお、本件登録意匠の断面図では内部構造が示されており、イ号意匠の当該部分の形態も酷似している。

(四)  したがって、イ号意匠が半透明である点は、本件登録意匠との類否に当たって影響を及ぼさない。

5 被告ら出願にかかる後願意匠について

(一)  被告は、イ号意匠が、被告ら出願・登録にかかる本件登録意匠の後願の乙30の意匠及びその類似意匠(乙31、32)に類似していることから、イ号意匠は本件登録意匠と類似しないと主張する。

(二)  しかし、乙30ないし32においては、使用状態を示す参考図に鉉状吊り手段が記載されているにすぎず、それは意匠権の効力とは無関係なものであるから、それらの意匠と本件登録意匠とは鉉状吊り手段の有無という大きな相違がある。

(三)  また、乙30には、カプセル(ニードルケース)内の両頭針やニードルホルダーもすべて透明体として描かれており、イ号意匠とは全く異なる。

(四)  なお、これら登録意匠の本意匠(乙30)の図面では透明体として描かれているが、その類似意匠(乙31、32)の図面は不透明体として描かれているにもかかわらず、類似関係にあるとされている。このように、透明・不透明の区別は、意匠の類否に影響しない。

6 このように、本件では、イ号意匠の具体的構成態様の相違点の印象が本件登録意匠とイ号意匠との多数の共通点の印象を凌駕していない。したがって、イ号意匠は本件登録意匠に類似するというべきである。

二  被告の主張

1(全般的主張)

本件登録意匠及びイ号意匠の構成態様は、それぞれ、別紙1「本件登録意匠の構成に関する当事者の主張」及び別紙2「イ号意匠の構成に関する当事者の主張」の各「被告の主張」欄のとおりである。これによれば、本件登録意匠とイ号意匠とは多くの点で著しく相違しており、両者は類似関係にない。

2(本件登録意匠とイ号意匠の類否について)

(一)  公知意匠の中には、原告主張の本件登録意匠の基本的構成態様をすべて備えたものが存する(乙4、乙5、乙7、乙8、乙9、乙11、乙14、乙15、乙22、乙23、乙26、乙29)から、原告主張の基本的構成態様は、ありふれた形態である。

また、原告主張の具体的構成態様自体も、公知意匠に示されており(乙4ないし29)、ありふれた形態である。

(二)  輸液容器にあっては、外観形状が新規で特徴的であれば、それが要部となり得るが、本件登録意匠の外観形状は、右の公知意匠との比較から、ありふれたものであり、全体の外観形状(原告主張の基本的構成態様及び具体的構成態様)は要部になり得ず、要部はそのさらに細部の具体的形状にあるというべきである。

(三)  しかるところ、本件登録意匠とイ号意匠とは、1記載のとおり著しく異なっており、特に本件登録意匠とイ号意匠とは、容器本体の形状が異なり、また、イ号意匠においては上下の首部が細い。そのため、本件登録意匠はずんぐりしているが、イ号意匠はスマートな印象を受けるという違いがあるから、両意匠は類似しないというべきである。

(四)  なお、原告は、鉉状吊り手段の存在が本件登録意匠の重要な要部であると主張するが、輸液容器を吊り手段を用いて吊り下げて、容器内に収容された薬液を患者に投与する点滴治療は、本件登録意匠出願前から医療現場でしばしば目にしてきた光景であり、当業者に限らず一般的な常識といえる。したがって、鉉状吊り手段の存在は本件登録意匠の要部とはならない。

3 本件登録意匠とイ号意匠における透明性について

(一)  意匠法六条八項は、「その意匠にかかる物品の全部又は一部が透明であるときは、その旨を願書に記載しなければならない」と規定し、これを受けた同法施行規則一条一項に規定される願書の様式第一の備考24には、「意匠法六条八項に規定する場合は、『意匠の説明』の欄に同項の規定により記載すべき事項を記載する。」と規定されている。

また、添付すべき図面の様式については、同規則二条一項に、「願書に添付すべき図面は、様式第五により作成しなければならない」と規定し、様式第五の備考19では、「物品の全部又は一部が透明である意匠の図面は、次の要領により作成する。イ 外周が無色かつ無模様の場合は、透けて見える部分はそのまま表す。ロ 外周の外面、内面又は肉厚内のいずれか一に模様又は色彩が表れている場合は、後面又は下面の模様又は色彩を表さないで、前面又は上面の模様又は色彩だけを表す。ハ 外周の外面、内面若しくは肉厚内又は外周に囲まれている内部のいずれか二以上に形状、模様又は色彩が表れている場合は、それぞれの形状、模様又は色彩を表す」と規定されている。

右に対応して、審査基準三-一二一八、Ⅰ-二-(18)においては、「イ 電球のように、すけて見える部分をそのまま表さなくては、その意匠を十分表現できないものは、備考19イの要領で表す。ただし肉厚は表さない。ロ その他のものは不透明体のように表し、形状、模様が重合する場合は備考19ロ、ハの要領で表す」と規定されている。この審査基準ロにおける「その他のもの」とは、基準イ以外のものすなわち「すけて見える部分をそのまま表さなくても意匠は十分表現でき、かつ外形は不透明体のように表現し、別途意匠の説明欄に透明部分についての説明を加えることで、透明部を有する意匠が正確に表現できるとき」であり、このような場合に限って「不透明体のように表す」こと(基準ロ)が認められているのである。

したがって、本件登録意匠のように、願書の「意匠の説明」欄に透明である旨の記載がなく、添付した図面においても不透明のように描いた場合には、不透明な意匠として出願されたことになるのは当然であり、本件登録意匠は不透明な意匠である。

(二)  これに対し、イ号意匠は、内部を十分に看ることができる透明な意匠であり、透明と不透明とでは美感が著しく相違することは明らかである。外観形状のほかに、輸液容器という物品の性質上、透明か不透明かは重要な要素であるから、透明か不透明かは意匠の要部というべきである。

4 被告ら出願にかかる後願意匠について

(一)  乙30ないし32は、被告及び訴外昭和電工株式会社の共同出願にかかる後願意匠(乙30)及びその類似意匠(乙31及び32)であり、イ号意匠は、右意匠(特に乙31)に類似している。したがって、これらが本件登録意匠とは別に登録されている以上、イ号意匠は本件登録意匠に類似しない。

(二)  なおこれらの意匠は、いずれも透明な意匠として登録されており、透明か否かが要部ではないとする原告の主張は失当である。

5 以上のとおり、本件登録意匠とイ号意匠とは類似しない。

第四  争点に対する当裁判所の判断

一  本件登録意匠について

1  本件登録意匠の構成について

本件登録意匠の構成については、当事者間において、記述の具体性をはじめとする記述方法について大きく乖離しているが、被告製品(検乙1)をも参照しつつ、甲2(意匠公報)により、双方の相違点が比較可能な程度に本件登録意匠の構成を把握するならば、別紙3「本件登録意匠及びイ号意匠の構成に関する裁判所の認定」における「本件登録意匠」欄(以下「本件登録意匠の認定」という。)のとおりとするのが相当である。本件登録意匠の構成に関する原告の主張は、必ずしも誤りとはいえないが、被告の主張をも勘案すると、イ号意匠との類否を検討するに当たっては概略的にすぎ、不十分である。

2  本件登録意匠の透明性について

意匠法六条八項は、願書に添付する図面に意匠を記載する場合において、「その意匠にかかる物品の全部又は一部が透明であるときは、その旨を願書に記載しなければならない」とし、意匠法施行規則二条一項(平成八年一二月二五日通商産業省令第七九号による改正前のもの。以下同じ。)は、「願書に添付すべき図面は、様式第五により作成しなければならない」とし、同施行規則様式第五の備考19は、「物品の全部又は一部が透明である意匠の図面は、次の要領により作成する。イ外周が無色かつ無模様の場合は、透けて見える部分はそのまま表す…」と規定している。そして、甲2によれば、本件登録意匠の意匠公報の「説明」欄には、意匠の透明・不透明に関する説明はなく、また、同公報中の図面によれば、断面図に描かれている筒状カプセル(ニードルケース)内部の形状が、正面図等の図面には透けて見えるように記載されていないことが認められる。

しかしながら、これらの規定は、意匠の内容を正確に表現するためのものであるから、願書の記載及び願書に添付した図面に記載された内容から、当業者であれば自明のものとして理解される内容については、必ずしも願書又は願書に添付した図面には明確に記載されていなくとも、なお意匠の内容として把握することが可能であり、このように解することは、「登録意匠の範囲は、願書の記載及び願書に添附した図面に記載され…た意匠に基いて定めなければならない。」とする意匠法二四条に反するものではないと解される。

しかるところ、甲2によれば、意匠公報中の「説明」欄には、「本意匠にかかる物品…は輸液容器であり」との記載があることが認められる。ところで、甲2、乙30ないし32によると、輸液容器は、頂部の被覆体を剥がして別体の薬剤バイアルを筒状カプセル(ニードルケース)内の両頭針に突き刺し、薬剤バイアルと本物品とを結合して、粉末薬剤又は凍結乾燥薬剤を本物品内で溶解し、輸液とするとともに、そのまま輸液バッグとして用いるものであり、輸液バッグとして用いる場合には、鉉状吊り手段によって本物品を器具等に吊り下げ、筒状排出口の底面のディスク状蓋体を外して、内部のゴム栓にチューブを挿通させて点滴等を行うものであると認められる。このような輸液容器の物品としての性質からすれば、原告が主張するように、内部の輸液の残量の確認や両頭針のバイアルへの刺通の様子を外部から確認できることが輸液容器として当然に求められ、それが透明又は半透明であることは、当業者にとっては自明の事柄であるというべきである。もっとも、甲2の正面図、背面図、平面図及び左右側面図には、外部から透けて見える内部の構造が明らかにされていないが、この点は、二通りの断面図によって明らかにされており、意匠の内容の開示において欠けるところはないというべきである。

以上より、本件登録意匠は、透明又は半透明な意匠であると認められる。

二  イ号意匠の構成について

イ号意匠の構成についても、本件登録意匠についてと同様に、当事者間において、記述の具体性をはじめとする記述方法について大きく乖離しているが、先に述べたのと同様の趣旨から、検乙1により、別紙3「本件登録意匠及びイ号意匠の構成に関する裁判所の認定」における「イ号意匠」欄(以下「イ号意匠の認定」という。)のとおりとするのが相当である。この点についても、原告の主張は、概略的にすぎ、不十分である。

三  本件登録意匠とイ号意匠の類否について

1  両者の共通点と相違点について

(一) 以上によれば、本件登録意匠とイ号意匠とは、次の点で共通していると認められる。

(1) 意匠全体が、上部と底部に口部が設けられた縦長で正面・背面視略八角形状の容器本体と、容器本体上部に取り付けられた筒状のカプセル(ニードルケース)と、容器本体下部に取り付けられた筒状排出口と、右カプセル(ニードルケース)の上端部から延びる半楕円形の鉉状の吊り手段からなる半透明の輸液容器である点

(2) 容器本体が、正面・背面視が肩部と底部に丸みを帯びた縦長の略八角形状で、底部は筒状の首部が突出している点

(3) 筒状カプセル(ニードルケース)が円筒形の胴部を有している点

(4) 鉉状吊り手段が筒状カプセル(ニードルケース)の上端部に回動自在に取り付けられている点

(二) 他方、本件登録意匠とイ号意匠とは、次の点で相違していると認められる。

(5) 容器本体については、<1>胴部の横断面の形状が略四角形状か(本件登録意匠)、略楕円形状か(イ号意匠)、<2>上部が、口部がやや突出して、首部を形成せずに筒状カプセル(ニードルケース)に嵌合しているか(本件登録意匠)、口部が細く突出して、首部を形成して筒状カプセル(ニードルケース)に接合しているか(イ号意匠)。

(6) 筒状カプセルは、<1>容器本体と接する下部左右横面に四角形状の切欠部を有しているか(本件登録意匠)、有していないか(イ号意匠)、<2>上部に拡径段部を有しているか(本件登録意匠)、フランジを有しているか(イ号意匠)、<3>頂部が、半円と三角形を結合した形状の薄い被覆体を有しているか(本件登録意匠)、張出部のある円形のフィルムを貼着しているか(イ号意匠)、<4>内部のニードルホルダーの形状。

(7) 筒状排出口は、<1>ゴム栓収容筒体を、容器本体の下方首部に下方から嵌合し、右筒体の下方にディスク状蓋体を下方から装着しているか(本件登録意匠)、容器本体の下方首部の下端にゴム栓収容筒体を一体的に形成し、右筒体の下面に四角状フィルムを貼着しているか(イ号意匠)、<2>ゴム栓収容筒体及びディスク状蓋体は、上下六段にわたって段部を形成しているか(本件登録意匠)、ゴム栓収容筒体には段部はないか(イ号意匠)。

(8) 正面・背面視における全体形状は、(a)筒状カプセル(ニードルケース)は、左右下部に切欠きを有する円筒形の胴部が、幅広の容器本体胴部に直接連なっており、(b)筒状排出口は、容器本体の下方首部を介して容器本体に連なっており、(c)筒状カプセル(ニードルケース)と筒状排出口はほぼ同じ幅を有し、容器本体の胴部の幅はそれらよりも大きいか(本件登録意匠)、(a)筒状カプセル(ニードルケース)は、円筒形の胴部が容器本体の上方首部を介して容器本体に連なっており、(b)筒状排出口は、容器本体の下方首部を介して容器本体に連なっており、(c)筒状カプセル(ニードルケース)は筒状排出口よりも幅が大きく、容器本体の胴部の幅はさらに大きいか(イ号意匠)。

(9) 平面視における全体形状は、筒状カプセル(ニードルケース)と筒状排出口がほぼ同じ幅を有し、容器本体の胴部の幅がそれよりもやや大きいか(本件登録意匠)、容器本体の幅は筒状カプセル(ニードルケース)より小さく、筒状排出口の幅はさらに小さいか(イ号意匠)。

(10) 筒状カプセル(ニードルケース)と容器本体と筒状排出口の上下方向の長さの割合が、七三対一〇〇対三八か(本件登録意匠)、四四対一〇〇対八か(イ号意匠)。

2  本件登録意匠の要部(需要者の注意を最も惹きやすい部分)について

(一) 本件登録意匠にかかる物品は、輸液容器であって、その使用態様は前記一2において認定したとおりである。それよりすれば、輸液容器は、上からバイアルを、下からチューブを結合するものであるから、その結合部である筒状カプセル(ニードルケース)及び筒状排出口の形態は、需要者(弁論の全趣旨によれば、輸液容器の通常の需要者は、実際に結合作業を行う医療関係者であると認められる。)の注意を惹く部分であると認められる。

また、輸液容器は、最終的には輸液バッグとして器具等に吊り下げて使用するものであり、その際には本物品の全体が乱界に入ることとなるから、正面はもとより、背面及び平面の全体形状も需要者の注意を惹くものと認められる(これに対し、横断面の形状(甲2における左右の側面図の形状)は、需要者の注意を惹くとはいえない。)。

以上よりすれば、本件登録意匠の要部は、第一に、本件登録意匠の認定3の筒状カプセル(ニードルケース)の形状及び同4の筒状排出口の形状であり、第二に、同1の基本的構成態様及び同6の全体形状であると認められる。

(二) この点について、原告は、本件登録意匠の要部は、その全体形状のみであると主張する。しかし、前記認定にかかる輸液容器の使用態様によれば、全体形状とともに、バイアル及びチューブの結合部である筒状カプセル(ニードルケース)及び筒状排出口も需要者である医療関係者の注意を惹く部分というべきである。

また、原告は、本件登録意匠は、その全体形状の中でも正面における形状を重視すべきであると主張する。しかし、輸液容器を器具等に吊り下げて使用する場合には、正面だけでなく、背面及び平面(横面)も看者の目に入り、印象付けられることは明らかであるから、それら三方向から見た形状のいずれもが要部であると解すべきである。

(三) 他方、被告は、本件登録意匠の全体形状は、公知意匠に多く見られるありふれた形状であって、要部となり得ないと主張する。

しかし、被告が公知意匠として提出するもののうち、乙8ないし10、乙30ないし34は、本件登録意匠出願前に公知になっていなかったものであるから、それらを根拠にして本件登録意匠がありふれた形状か否かを論じることはできない。また、その余の公知意匠においては、全体が筒状カプセル(ニードルケース)、容器本体及び筒状排出口の三部分から成っている点はありふれたものと認められるが、乙6及び乙28を除いては、筒状カプセルがバイアル全体を収容する形態になっている点や、容器本体が正面・背面視において略八角形状でない点において異なっており、しかも、本件登録意匠のような筒状排出口の形状は、本件訴訟において提出された公知意匠中には見られないものである。

したがって、本件登録意匠の全体形状は、ありふれたものとはいえず、なお需要者の注意を惹く要部というべきである。

3  以上に基づき、本件登録意匠とイ号意匠との類否について判断する。

(一) 筒状カプセル(ニードルケース)及び筒状排出口について

(1) 筒状カプセル(ニードルケース)の形状については、前記共通点(3)(円筒形の胴部を有している点)を除き、形状が相違している(前記相違点(6))。しかし、これらの相違点はいずれもわずかな相違であって、これにより美感が左右されるほどのものではないと認められる。

(2) 他方、筒状排出口の形状については、形状及び大きさとも大きく相違している(前記相違点(7))。そして、本件登録意匠のような筒状排出口の形状は、本件訴訟において提出された公知意匠(乙4ないし7、乙11ないし29)のどれにも見られない独自性の強いものであり、その全体に占める大きさと併せて、本件登録意匠の美感を大きく左右している要素の一つであると認められる。したがって、筒状排出口の形状の相違は、無視できないものというべきである。

(二) 基本的構成態様及び全体形状について

(1) 基本的構成態様については、前記共通点(1)のとおり、本件登録意匠とイ号意匠はすべて共通している。

(2) 他方、全体形状については、前記相違点(8)ないし(10)のとおり、相違している。これらの相違点は、主として、基本的構成態様の各部の大きさや接続形状に係るものではあるが、本件登録意匠では、<1>筒状カプセル(ニードルケース)がほぼその幅のまま(正面・背面視では切欠きによりわずかに細くなるが、平面視では円筒の太さのまま)容器本体に接しており、筒状排出口も幅の大きいゴム栓収容筒体を容器本体首部に接続させている構成、<2>平面視において容器本体の幅が筒状カプセル(ニードルケース)よりも大きくなっており、筒状排出口の幅も筒状カプセル(ニードルケース)とほぼ同じである構成、<3>筒状排出口が幅広で大きい構成から、全体として、重心の低い安定した印象を与えるのに対して、イ号意匠では、<1>筒状カプセル(ニードルケース)及び筒状排出口はいずれも細い容器本体首部を介して容器本体に接している構成、<2>平面視においては、筒状カプセル(ニードルケース)が幅広で、筒状排出口は幅狭である構成、<3>筒状排出口が幅狭で小さい構成から、全体として、重心の高い不安定な印象を与えると認められる。

(3) 原告は、本件登録意匠が鉉状吊り手段を備える点が本件登録意匠の重要な特徴をなしていると主張する。確かに、本件登録意匠のような形状の鉉状吊り手段を備えた輸液容器の意匠は、本件訴訟において提出された公知意匠の中に見出すことはできない(乙4、乙11、乙14ないし24、乙26及び27、乙29における鉉状吊り手段は本件登録意匠のものとは明らかに形状が異なる。)。しかし、前記のように輸液容器は、一般に輸液バッグとして利用されるものであり、その際には器具等に吊るされるものであるから、何らかの吊り手段を具備することが通常であるところ、本件登録意匠の吊り手段の形状は、単に筒状カプセル(ニードルケース)に回動自在に取り付けられた半楕円形の鉉状の形状のものであるにすぎず、このような吊り手段は、日常用品をはじめ医療用品においても乙39ないし44に見られるとおり利用されているありふれたものであって、この点が特に需要者の注意を惹き、全体の美感を支配するほどのものとは認められない。したがって、原告の右主張は採用できない。

(三) 以上によれば、イ号意匠は、本件登録意匠と要部の重要な点において異なり、多くの共通点のもたらす印象の同一性を凌駕して、意匠全体として本件登録意匠とは異なる美感をもたらすものというべきであるから、イ号意匠は、本件登録意匠と類似しないものというべきである。

第五  結論

以上によれば、原告の請求は理由がないから、主文のとおり判決する。

(平成一〇年七月二日口頭弁論終結)

(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 高松宏之 裁判官 水上周)

(別紙) 物件目録

一 物品の種類

輸液容器

二 物品の意匠

別添イ号意匠写真のとおり。

1 基本的構成態様

上部と底部に口部が設けられた容器本体と、上部の口部に取り付けられた筒状のカプセルと、このカプセルの上端から延びる鉉状吊り手段からなる構成、をその基本的構成態様とする。

2 具体的構成態様

(一) 正面視の全体形状は、丸みを帯びた胴部と角張ったカプセルとカプセルから垂れた鉉からなり、

(二) 容器本体は、肩部と底部が丸みを帯び、上部と底部に口部を備え、断面長円形状の胴部からなり、胴部と上部の口部との連結部はくびれており、底部の口部は円筒状となっており、

(三) カプセルは、円筒状の胴部を有しており、その上端部からは半楕円形状の鉉状吊り手段が形成されており、

(四) カプセルの上端開口部は、三角形上のタブを有する円形のカバー部材が形成されている、

(五) 輸液容器

の構成、をその具体的構成態様とする。

イ号意匠写真

<省略>

<省略>

(19)日本国特許庁 (11)登録意匠番号 929552

(45)平成7年(1995)7月11日発行 (12)意匠公報(S)

(52)J7-43

(21)意願 平5-38447 (22)出願 平5(1993)12月16日

(24)登録 平7(1995)4月25日

(72)創作者 長谷川周司 大阪府大阪市北区本庄西3丁目9番3号 株式会社ニツシヨー内

(72)創作者 豆田正和 大阪府大阪市北区本庄西3丁目9番3号 株式会社ニツシヨー内

(73)意匠権者 株式会社ニツシヨー 大阪府大阪市北区本庄西3丁目9番3号

(74)代理人 弁理士 朝日奈宗太 外3名

審査官 鍋田和宣

意匠に係る物品 輸液容器

(55)説明 本意匠に係る物品(以下、本物品という)は輸液容器であり、別体の薬剤バイアル(図示されていない)と結合して、粉末薬剤または凍結乾燥薬剤を本物品内で溶解し、輸液とするとともにそのまま輸液バツグとして用いることができるものである。底面図は平面図と対称にあらわれる。

<省略>

(別紙1)本件登録意匠の構成に関する当事者の主張

原告の主張 被告の主張

1 基本的構成態様

(1) 上部と底部に口部が設けられた容器本体 (2) 上部の口部に取り付けられた筒状のカプセル (3) このカプセルの上端部から延びる鉉状吊り手段 からなる構成 本件意匠の基本的構成態様の一部が、容器本体と、ニードルケース(筒状のカプセル)と吊り具(鉉状の吊り手段)からなることは認める。

2 具体的構成態様

(1) 正面視の全体形状は、丸みを帯びた胴部と角張ったカプセルとカプセルから垂れた鉉からなり、 (1)<1> 筒状排出口の長さが長く、右筒状排出口部によって容器本体の胴部が上方に高く持ち上げられている。 <2> 容器本体の胴部とニードルケースの間に、首部がない。 <3> 容器構成部分のすべてが不透明である。

(2) 容器本体は、肩部と底部が丸みを帯び、上部と底部に口部を備え、断面長円形状の胴部からなり、 (2) 容器本体の胴部は、 <1> 横断面略四角形状の角型容器である。 <2> 分厚い。 <3> ごつごつした印象である。

(3) カプセルは、円筒状の胴部を有しており、その上端部からは半楕円形状の鉉状吊り手段が形成されており、 (3) ニードルケースは、 <1> 容器本体の胴部から直接に、上方に筒状に伸びており、首部を備えていない。 <2> 下部に二つの四角形状切欠部を有する。 <3> 上部に拡径段部とフランジ部を備えている。 <4> 内部に両頭針を有するニードルダーがある。 <5> 首を縮めたような窮屈感がある。

(4) 筒状排出口は、 <1> ゴム栓収容筒体を、容器本体の下方首部に下方から嵌合し、該筒体の下方にゴム栓カバー用のディスク状蓋を下方から装着している。 <2> 筒状排出口部全体の径寸法が極めて大きい。 <3> ディスク状蓋は、径寸法が極めて大きくかつ厚みがある。 <4> 下方首部は、ディスク状蓋、ゴム栓収容筒体とともに、径寸法が極めて大きい。 <5> 全体的に断面の凹凸が多く、複雑な印象がある。

(4) カプセルの上端開口部は、三角形状のタブを有する円形のカバー部材が形成されている

(5) 輸液容器 (5) 輸液容器

(別紙2)イ号意匠の構成に関する当事者の主張

原告の主張 被告の主張

1 基本的構成態様

(1) 上部と底部に口部が設けられた容器本体と (2) 上部の口部に取り付けられた筒状のカプセルと (3) このカプセルの上端部から延びる鉉状吊り手段と からなる構成 イ号意匠の基本的構成態様の一部が、容器本体と、ニードルケース(筒状のカプセル)と、吊り具(鉉状の吊り手段)とからなることは認める。

2 具体的構成態様

(1) 正面視の全体形状は、丸みを帯びた胴部と角張ったカプセルとカプセルから垂れた鉉からなり、 (1)<1> 筒状排出口の長さが短く、右筒状排出口部によって容器本体の胴部は低い位置にある。 <2> 容器本体の胴部とニードルケースの間に首部がある。 <3> 容器構成部分は、両頭針、ニードルホルダー、ゴム栓以外は透明で、透明部分から、両頭針、ニードルホルダー及びゴム栓が見える。

(2) 容器本体は、 <1> 肩部と底部が丸みを帯び、上部と底部に口部を備え、断面長円形状の胴部からなり、 <2> 胴部と上部の口部との連結部はくびれており、 <3> 底部の口部は円筒状となっており、 (2) 容器本体の胴部は、 <1> 横断面略トラック型の楕円型容器である。 <3> 薄型である。 <3> スマートな印象である。

(3) カプセルは、円筒状の胴部を有しており、その上端部からは半楕円形状の鉉状吊り手段が形成されており、 (3)ニードルケースは、 <1> 容器本体とニードルケースとの間に、かなり長い首部がある。 <2> 下部に本件登録意匠における切欠部に相当するものはない。 <3> 上部にフランジ部はあるが、本件登録意匠の拡径段部に相当するものはない。 <4> 内部の両頭針を含むニードルホルダーは、本件登録意匠のものと構造が全く異なる。 <5> 首部が長く、スッキリ感がある。

(4) 筒状排出口は、 <1> 容器本体の下方首部の下端にゴム栓収容フランジ部を一体的に形成し、該フランジ部下面にゴム栓カバー用の四角状フィルムを貼着している。 <2> 筒状排出口部全体の径寸法は小さい。 <3> ゴム栓カバー用の四角状フィルムは、極めて薄くかつ大きく広がっている。 <4> 容器本体の下方首部とゴム栓収容フランジ部間に、本件登録意匠における径の大きいゴム栓収容筒体のごとき中間膨大部がなく、下方首部の径は小さい。 <5> 全体的にシンプルな印象である。

(4) カプセルの上端開口部は、三角形状のタブを有する円形のカバー部材が形成されている

(5) 輸液容器 (5) 輸液容器

(別紙3)本件登録意匠及びイ号意匠の構成に関する裁判所の認定

本件登録意匠 イ号意匠

1 上部と底部に口部が設けられた縦長で正面・背面視略八角形状の容器本体と、容器本体上部に取り付けられた筒状のカプセル(ニードルケース)と、容器本体下部に取り付けられた筒状排出口と、右カプセル(ニードルケース)の上端部から延びる半楕円形の鉉状の吊り手段からなる透明又は半透明の輸液容器である。 2 容器本体は、 <1> 正面・背面視が肩部と底部に丸みを帯びた縦長の略八角形状で、横断面が略四角形状の胴部を中心とし、 <2> 底部は筒状の首部が突出し <3> 上部は口部がやや突出して筒状カプセル(ニードルケース)に嵌合しており、首部を備えていない。 3 筒状カプセル(ニードルケース)は、 <1> 円筒形の胴部を有しており、 <2> 容器本体と接する下部左右横面に四角形状切欠部を有し、 <3> 上部に拡径段部を有し、 <4> 頂部に半円と三角形を結合した形状の薄い被覆体を有し、 <5> 内部に両頭針を有するニードルホルダーがある。 4 筒状排出口は、 <1> ゴム栓収容筒体を、容器本体の下方首部に下方から嵌合し、右筒体の下方にディスク状蓋体を下方から装着しており、 <2> ゴム栓収容筒体及びディスク状蓋体は、上下六段にわたって段部を形成している。 5 鉉状吊り手段は、筒状カプセル(ニードルケース)の上端部に回動自在に取り付けられている。 6 全体形状は、 <1> 正面・背面視においては、 (a) 筒状カプセル(ニードルケース)は、左右下部に切欠きを有する円筒形の胴部が、幅広の容器本体胴部に直接連なっており、 (b) 筒状排出口は、容器本体の下方首部を介して容器本体に連なっており、 (c) 筒状カプセル(ニードルケース)と筒状排出口はほぼ同じ幅を有し、容器本体の胴部の幅はそれらよりも大きい。 <2> 平面視においては、筒状カプセル(ニードルケース)と筒状排出口がほぼ同じ幅を有し、容器本体の胴部の幅がそれよりもやや大きい。 <3> 筒状カプセル(ニードルケース)と容器本体と筒状排出口の上下方向の長さは、73対100対38となっている。 1 上部と底部に口部が設けられた縦長で正面・背面視略八角形状の容器本体と、容器本体上部に取り付けられた筒状のカプセル(ニードルケース)と、容器本体下部に取り付けられた筒状排出口と、右カプセル(ニードルケース)の上端部から延びる半楕円形の鉉状の吊り手段からなる半透明の輸液容器である。 2 容器本体は、 <1> 正面・背面視が肩部と底部に丸みを帯びた縦長の略八角形状で、横断面が略楕円形状の胴部を中心とし、 <2> 底部は筒状の首部が突出し <3> 上部は口部が細く突出して筒状カプセル(ニードルケース)に接合しており、首部を備えている。 3 筒状カプセル(ニードルケース)は、 <1> 円筒形の胴部を有しており、 <2> 切欠部を有しておらず、 <3> 上部にフランジ部を有し、 <4> 頂部に張出部のある円形のフィルムを貼着し、 <5> 内部に両頭針を有するニードルホルダーがあるが、形状は本件登録意匠と異なる。 4 筒状排出口は、 <1> 容器本体の下方首部の下端にゴム栓収容筒体を一体的に形成し、右筒体の下面に四角状フィルムを貼着しており、 <2> ゴム栓収容筒体には段部はない。 5 鉉状吊り手段は、筒状カプセル(ニードルケース)の上端部に回動自在に取り付けられている。 5 全体形状は、 <1> 正面・背面視においては、 (a) 筒状カプセル(ニードルケース)は、円筒形の胴部が容器本体の上方首部を介して容器本体に連なっており、 (b) 筒状排出口は、容器本体の下方首部を介して容器本体に連なっており、 (c) 筒状カプセル(ニードルケース)は筒状排出口よりも幅が大きく、容器本体の胴部の幅はさらに大きい。 <2> 平面視においては、容器本体の幅は筒状カプセル(ニードルケース)より小さく、筒状排出口の幅はさらに小さい。 <3> 筒状カプセル(ニードルケース)と容器本体と筒状排出口の上下方向の長さは、44対100対8となっている。

意匠公報

<省略>

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